令和5年7月9日~10日の大雨

梅雨前線の影響により、令和5年7月9日~10日にかけて九州地方を中心に大雨になりました。

【大雨特別警報の発表】

・7月10日 6時40分 福岡県朝倉市、東峰村
・7月10日 7時20分 福岡県添田町
・7月10日 7時30分 福岡県久留米市、うきは市
・7月10日 7時40分 福岡県八女市
・7月10日 8時00分 大分県日田市
・7月10日 9時05分 大分県中津市

1.気象庁レーダに基づく九州周辺の10分間隔の降水強度分布
(GIFアニメーション、6MB)

雨域は西南西から東北東に移動しているが、その中で停滞する雨域があり、「線状降水帯」を形成している。「顕著な大雨に関する気象情報」(線状降水帯による大雨の情報)が発表された時刻は以下の通り。

7月9日18:09UTC(日本時間10日03:09)福岡県
7月9日19:39UTC(日本時間10日04:39)佐賀県
7月9日19:50UTC(日本時間10日04:50)福岡県
7月9日20:09UTC(日本時間10日05:09)大分県
7月9日20:20UTC(日本時間10日05:20)福岡県
7月9日23:10UTC(日本時間10日08:10)佐賀県
7月9日23:20UTC(日本時間10日08:20)大分県
7月9日23:29UTC(日本時間10日08:29)福岡県

2.850 hPa面の相当温位(気象庁メソ数値予報モデルGPV(MSM)に基づく)
(GIFアニメーション、2MB)

相当温位は「大気がどの程度暖かく湿っているか」の指標である。東シナ海から本州にかけて、梅雨前線に沿って相当温位が350Kを超える暖かく湿った空気に覆われている。

3.500hPa面の気温と高度場(気象庁メソ数値予報モデルGPV(MSM)に基づく)

(GIFアニメーション、2MB)

中国大陸に寒気を伴う気圧の谷があり、東に移動している。その影響で九州上空の気温が下がり、大気が不安定化したと思われる。

謝辞
上記の画像は災害気象学研究室がGrADS(Grid Analysis and Display System)を用いて描いたものです。元データである気象庁全国合成レーダーGPV、および気象庁メソ数値予報モデルGPV(MSM)のデータは、京都大学生存圏研究所の生存圏データベースよりダウンロードしたものです。

令和5年6月2日~3日の大雨

台風第2号と梅雨前線の影響により、西日本から東日本の太平洋側で大雨になり、死者5名(豊橋市1人、浜松市1人、磐田市1人、かつらぎ町1人、西原町1人)、行方不明者2名、全壊家屋12棟、床上浸水2,378棟(6月9日現在)の大きな被害が生じました。

1.愛知県~静岡県に大雨をもたらした降水システム
(1) 国土交通省XRAINに基づく1分間隔の降水強度分布
(GIFアニメーション、75MB)

(2)豊川市(34.85°N、137.4°E)におけるレーダ反射強度の時間高度断面図(XRAIN浜松レーダのデータより作成)

・最大エコー頂は9.5 kmであり、圏界面高度(約14 km)よりかなり低い。下層ほどレーダ反射強度が大きくなっており、雨滴の成長が下層で活発であったことが示唆される。
・14:40~17:40のデータが得られていない。おそらくレーダサイト周辺での大雨により電波が減衰したためと思われる。

2.気象庁レーダに基づく近畿から関東周辺の10分間隔の降水強度分布
(GIFアニメーション、9MB)

前線性の降雨帯(frontal rainband)であるバンド状のレーダエコーが、次々と発生している。これらの中で、停滞する降雨帯が「線状降水帯」と呼ばれる雨域を形成している。

3.850 hPa面の相当温位(気象庁メソ数値予報モデルGPV(MSM)に基づく)
(GIFアニメーション、1.5MB)

相当温位は「大気がどの程度暖かく湿っているか」の指標である。台風第2号から暖かく湿った空気が供給されるとともに、北から相当温位の低い空気が南下し、相当温位の勾配が強まって(前線が強化されて)いる。

謝辞
上記の画像は災害気象学研究室がGrADS(Grid Analysis and Display System)を用いて描いたものです。元データである国土交通省XRAINは、文部科学省の補助事業により開発・運用されているデータ統合解析システム(DIAS)の下で,収集・提供されたものです。また気象庁全国合成レーダーGPV、および気象庁メソ数値予報モデルGPV(MSM)のデータは、京都大学生存圏研究所の生存圏データベースよりダウンロードしたものです。以上記して感謝いたします。